原生生物のトリコモナスが病原体の感染症で通常は性行為によって感染しますが感染力が強く下着やタオル、便座、出産時に母から感染する可能性もある感染症です。
女性の尿道および膣に感染する場合が多く膣や膀胱内に入り込み炎症を引き起こします。
粘膜に留まって組織への侵入はなく男性の場合には排尿で排除されることも多いですが尿道や前立腺にまで侵入します。
膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis)原虫によ る感染症は、最もポピュラーな性感染症(STD)として 古くから知られているもののひとつであるが、地域によ る感染率の差が大きい。また、近年我が国では減少傾向 にあるが、再発を繰り返す難治症例も少なくない。再発 の経過をみると、原虫の残存によるものと、隣接臓器か らの自己感染のほか、パートナーからの再感染がある。 すなわち、膣トリコモナスは、患者自身の座ばかりで なく、子宮頸管、下部尿路やパートナーの尿路、前立腺 などにも侵入し、ピンポン感染をきたす。にもかかわら ず、男性に比べ特に女性で症状が強いこともあり、本感 染症とHIV 感染や PID(卵管炎などの骨盤内感染)など との関係にも留意することが必要である。
引用元:腟トリコモナス症-日本性感染症学会
膣トリコモナス症の症状
男性の場合は尿道から膿が出たり排尿時に軽い痛みを起こします。ただ自覚症状がない場合もほとんどです。
女性の場合には膣炎症状を起こし外陰部や膣に強いかゆみや痛みがでてアワ状の悪臭を伴うおりものが出ることがあり放置していると不妊症や早産・流産につながります。
尿道炎や外陰炎を招くこともありますが女性も必ずしも健康時に症状が出るとは限りません。
通常感染してから10日ほどの潜伏期を経て症状が現れHIV感染リスクや未熟児の出産が増加するとも言われています。
男性の場合の症状
・無症状の場合が多い
・排尿時、入浴時に痛むことがある
女性の場合の症状
・外陰部に強いかゆみ、ただれる事もある
・黄色、血液の混じったおりものが出る(悪臭もある)
・おりものの色が濃くなる
・おりものが細かい泡が混じる
トリコモナスの検査方法
トリコモナスは症状がでないことも多く、また男性の場合は検査をしてもその他の非特異性尿道炎と区別がつかず、また原虫を見つけられないこともあるために、トリコモナスであると診断がつかない場合もあります。
トリコモナスの検査方法には病院などの医療機関で検査をする方法と、自宅でインターネットなどで検査キットを購入して検査をする方法があります。
自宅などでも検査をする場合は、男性の場合は朝起きて最初の尿を検査します。女性の場合には膣内の分泌液を綿棒などで接種して検査キットに移します。
一方病院では、男性は自宅での検査同様に尿検査の他、精液や前立腺液などを使用して検査をして行きます。女性の場合は自宅と同様に膣内部の分泌液を使用します。
こうして摂取した検体をトリコモナスの場合は、塗抹法、培養法、液状化処理法、そして遺伝子検査法があります。
インターネットなどの検査キットでは培養法などはトリコモナス原虫が運搬中に死んでしまうので、主に液状化処理法が利用され、保存液に入れて検査所で塗抹法が利用されます。
塗抹法はもっともトリコモナスの検査で使用される方法で、検体を顕微鏡で見る方法です。顕微鏡でトリコモナス原虫がいるかどうかを発見していきます。
培養法はトリコモナス原虫が少なそうな時に使用する方法で、トリコモナスを増やしてから確認をします。
しかし、培養法は日数がかかってしまうというデメリットもあります。遺伝子検査はPCR法などで検査を行います。非常に精度も高い検査で、2、3日で検査結果も出てきます。
しかしながら、塗抹法でも十分にトリコモナスを発見できるとして、遺伝子法はあまり用いられていません。
男性の場合は排尿時にトリコモナスが流れてしまうために、トリコモナスの発見がしにくい場合もあります。
しかし、検査方法がいくつかあるので、気になる人は検査をしてしっかりと治療をした方が良いでしょう。
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膣トリコモナス症の検査と治療
女性の場合には膣から綿棒で粘膜を採り、スライドグラス上に塗布しギムザ染色の後に顕微鏡で病原原虫を観察して診断します。
男性の場合は尿沈渣や前立腺分泌物中に運動する虫体が検出により診断します。
感染日から2~3日でも検査は可能ですが発症までは10日ほどかかります。陽性の場合には通常メトロニダゾールを用いる。内服に加えて膣剤を併用する場合もある。
かゆみは薬で早くなくなりますが治療をしっかりしておかなければ再発する可能性があります。
またパートナーの自覚症状が無くても一緒にしっかり検査をし治療をしなければ実は感染しており再感染する場合も多い。
トリコモナスの潜伏期間
性感染症の場合、どの病気でも感染してから潜伏期間を経て症状が現れます。
これは、性感染症を引き起こすウイルスや原虫が体の中で増幅して症状を引き起こすまでに時間が掛かるからであります。
性感染症の中でトリコモナスの潜伏期間は数日から数週間の潜伏期間を経て症状が出るといわれています。
これは男性の場合であり、女性の場合はさらに数ヶ月を経て症状が出る場合もあります。
トリコモナス以外では、1日から1週間の潜伏期間のある、クラミジア、ヘルペス、淋病や雑菌性尿道炎、またカンジダなどがあります。
コンジローマやHIV,梅毒などはさらに長期の潜伏期間を経て発症します。
男性と女性で潜伏期間に違いがあるのは、感染する場所であり、性器の構造に違いがあるためです。
女性の場合は外陰部だけでなく、膣内、子宮頸部、尿道などにまでクラミジアが入り込んでしまうために潜伏期間としても長くなると言われています。
しかしながら、男性の場合は女性の膣粘膜に含まれるような常在菌を持っていないために、潜伏期間が短く症状が出る場合があります。
さらに男性の方が症状が軽い理由には男性の場合、排尿時に尿と一緒にトリコモナス原虫が排出されてしまう場合もあります。
そのために、潜伏しているトリコモナスの数も少なくなり、症状も軽くなっていると言います。
このように潜伏期間は比較的短いけれども症状も中々わかりにくいトリコモナス原虫ですが、実は感染率は非常に高いのです。
もしも男性がトリコモナスに感染している女性と性交渉をした場合は、約70%の確率で感染するといわれています。
これは、上記の通り女性の膣内でのトリコモナスが増殖しやすいことが影響しているといわれています。そのために、日本国内での感染者数も女性の5分の1程度であるといわれています。
女性に比べると男性がトリコモナスに受ける影響は多くありません。軽い症状が出るか、まったく症状がでないのが一般的です。
しかし、感染しているとは知らず、潜伏期間中でも性交渉などをしてしまうと、感染力の強いトリコモナスの感染を広げてしまう原因にもなってしまうために、注意が必要です。
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トリコモナス膣炎は自然治癒では治らない
トリコモナス膣炎に感染すると、50%から70%の人には症状が出るそうです。
しかしながら、どちらかというと症状がでない、もしくは症状が軽い人が多く、治療をしない人、または感染していることに気がつかない人がほとんどだそうです。
症状が治まったからといって、トリコモナス膣炎が治ったと勘違いをしてしまう人が多くいるそうで、そのまパートナーと性交渉をしてしまい、出産時や他の検査などで病院に行った際に気がつく人もいるそうです。
もしも風邪を引いた場合は市販の薬を飲んでみたり、家で休んでいると治っていたりするものですが、性感染症に関してはそうした自然治癒に頼ることができず、しっかりと適切な薬を使用しなければ治癒はしません。
市販であれ、病院で処方をしてもらう薬であれ、トリコモナスの場合は抗生物質を使用していきます。
症状に応じて軟膏や膣錠を処方してくれる病院もありますが、一般的には経口剤を使用して治療を進めていきます。
薬を使用した場合には、大凡90%から95%は1度目の治療で完治するといわれています。
しかしながら、トリコモナスは非常に感染力が強く、また、水分がある場所では生きることができるために、完治しないことがあります。
女性の場合は、生理時に経血が流れることで膣内に残存していたトリコモナスが増殖してしまうケースもあるようです。
また、トリコモナスは治ったと思っても、パートナーとのピンポン感染もあるために、1人ではなくパートナーとの治療が必要となります。
トリコモナスは自然治癒では治らないということを認識した上で治療をして行く必要があるのです。
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