「Acquired Immune Deficiency Syndrome」これはAIDSの正式名称であり、日本語では後天性免疫不全症候群といいます。
ヒト免疫不全ウイルス、通称HIVが人間の体内に感染し、免疫細胞を破壊していくという免疫不全症の1つなのです。
この2つを混同してしまいイマイチその違いがわからない人もいますが、簡単に言ってしまえばHIVはウイルスの名前でエイズは感染症の病気の名前となります。
HIVの発症の地と言われるアフリカはもっともエイズ患者の多いことでも有名で、全世界4200万人いる患者のうち70%を占めています。
なかでもアフリカ南部はエイズの感染率が非常に高く、国民の20~30%が感染している国もあるほどです。
これはアフリカだけでなく世界中で貧困や戦争による影響も大きくあり、発展途上国の多くでエイズ患者の増加が見られています。
日本では1985年に初めてエイズ患者が確認されました。その時の感染経路は薬害エイズによる感染で血液凝固因子製剤によるものでした。
それ以降日本国内では微増ながら年々増加しており、感染経路も同性間での性的接触による原因がもっとも多くなっています。
HIVは血液、精液、膣分泌液、母乳などからしか感染しないほど弱いウイルスです。このHIVに感染すると急性感染期で初めての初期症状がでて、その後は無症候期として症状はほとんどなくなります。
そして、HIV感染から5~10年を経て体内の免疫細胞が破壊されエイズとなっていきます。免疫細胞が破壊されてくると、普段はかからない日和見感染にかかります。
これらの厚生労働省が定めた23の病気にかかるとエイズが発症したと診断をされていきます。
この23の疾患の中にはカンジダ症や単純ヘルペスウイルスなどのHIVに感染していなくてもかかってしまうことのある病気や、エイズの病気として昔から有名なカポジ肉腫やニューモシスチス肺炎などがあります。
HIVに感染したとしても、そしてこれら23の病気にかかったとしてもすぐに死亡する心配はありません。
病気の進行を放っておいてしまうと体内の免疫がないために命の危険性があります。早い段階で見つけることができれば、進行を妨げることのできる病気なのです。
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過去最多のエイズ患者、HIV感染者
厚生労働省エイズ動向委員会によると2013年までで日本国内のHIV感染者とエイズ患者をあわせた人数が23015人となり過去最多となったことがわかりました。
これは世界中、特にアフリカやアジアの発展途上国から見れば僅かな数字であり、その増加率も微々たる物ではありますが、実際にはHIV感染者もエイズ患者も、先進国の中で唯一日本だけが増加し続けているのです。
このことはその時の社会の流れなどがその背景には関係してきています。
エイズ患者のうちわけを見ていくと、2012年より37件増加している484件の報告がありました。一昨年の473件というこれまでの過去最多件数を11件上回っていることになりました。
これまでの累計数が7203件であり、その数は年々増加しています。この484件のうち、日本人男性が438件で外国人男性が28件、日本人女性が11件で、外国人女性が7件となりました。
エイズ患者のほとんどを占める日本人男性ですが、これは感染経路を見ると、その多さの理由が見えてきます。
感染経路の中でもっとも多いのが同性間での性的接触であり、これは全体の約70%を占めています。
異性間での性的接触が17.5%ということを考えるとその多さが見えてきます。男性同士の恋愛が世間でも認められてきているため、同性同士での性的接触も増えてきました。
そのためにエイズ患者も増加していると考えられています。その他の感染経路としては2013年では静注薬物使用や母子感染が1%未満となっており非常に低くなっています。
年齢別で見ると、HIV感染者は20代30代がもっとも多くいます。しかしエイズ患者は30代、40代がもっとも多くなっており、2013年の段階では60歳以上のエイズ、HIV感染者が共に過去最高となっています。
これはHIV感染していたことを気がつかずエイズが発症してから気がついた高齢者が増えているという現状もあり、その病気の発見のしにくさも表している結果となっています。
世界に蔓延するエイズ
エイズの感染者数は中々減ることがありません。これは日本だけではなく世界中で問題となっていることです。
元NBAのスター選手であるマジックジョンソンがHIVに感染していることを発表したり、人気バンドクイーンのフレディ・マーキュリーがエイズを発症し、1991年にニューモシスチス肺炎で死去したこともあり、スポーツ選手、芸能人にかかわらず感染してしまう病気であることが世界に広まりました。
日本国内での2013年のHIV感染者とエイズ発症患者の数字が厚生労働省のエイズ動向委員会から発表され、HIV感染者数はこれまでに2番目に多い1106人で、エイズ患者はこれまででもっとも多く484件となり、HIV感染者数とエイズ発症患者数の合計でも2008年以来最多となりました。
HIV感染者とエイズ発症患者数は2013年は併せて1590人となりました。毎年1500人前後でHIV感染者とエイズ発症患者数は推移しており、これまでの累計が23015人に上っていることもわかりました。
新たなHIV感染者の割合では20代と30代がもっとも多く、30代の感染者数は370人、新たなエイズ発症患者では30代がもっとも多い結果となりました。
新たなエイズ患者数の数自体が多いのは30代ではありますが、その伸び率が一番高いのは50代であり、年齢にかかわらず蔓延しているという結果になりました。
感染したかも知れないという可能性がある場合には検査を受けることをオススメしますが、検査を受けることができるのは基本的に病院、保健所、そして自らで行う検査キットを使用してと言うのが一般的です。
HIVやエイズの場合はそのウイルスに対する抗体が体内にどれだけできているかで判断します。2013年のHIV抗体を検査した件数は2012年よりも増加しており、13万6400件となっています。
相談件数は過去最多が2008年の23万91件に比べ大幅に減少し、14万5041件となっています。
感染率は非常に低いですが、早期発見早期治療がエイズに関してはもっとも重要なことではあるので、心配があればまずは最寄りの保健所や病院などで検査を受けることが良いでしょう。
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日本におけるエイズの現状
厚生労働省エイズ動向委員会によると2013年に報告された新規のHIV感染者数は1106件であったと報告をしました。
これは1985年に計測を開始してから2008年に次ぐ2番目に多い数字となっています。そして、新規のエイズ患者数は484件となっています。
新規のエイズ患者数では1985年以来もっとも多い数字となり、新規のHIV感染者とエイズ患者を合計数は、これまでは1500件前後で推移していた合計数ですが、2013年には1590件となり過去最多の件数となっています。
HIV患者数は2013年末までで15812件となり、エイズ患者数は7203人となり合計で23015人となっています。
報告されているエイズ患者の中での男女、国籍の割合は、日本人男性が438件となりもっとも多くなっています。これは2012年の387件を大きく越える数字となっています。
しかし女性は11件で2012年は18件と減少していました。その他外国人男性が28件、外国人女性が7件となっています。
エイズ患者に関してもそうですがHIV患者も男性の数が非常に増加しています。感染経路もHIVの場合は男性間での性的接触による感染者が780件であり異性間での性的接触の194件に比べて4倍ほどとなっています。
合図患者に関しては異性間の性的接触が116件、同性間による性的接触が273件と報告されており、ここでも倍近い数字となっています。
HIV患者、エイズ患者ともに母子感染や薬物使用による感染が1%未満となっており、同性間での性的接触が圧倒的な感染経路の原因となっています。
日本国内においてエイズ患者の報告されている地域分布は関東・甲信越地方からの報告が最も多く、2013年で44.6%をしめています。これまでの累計も56.6%となったことがわかりました。
特に東京からの報告が多く110件となっており、2012年の92件から18件増加し、過去最高となっています。
その他の地域では大阪、神奈川、愛知、千葉とやはり人口が密集している地域ほど感染者の割合が多いことがわかりました。
唾液でエイズに感染する?
エイズに関しては、HIVウイルスの段階で感染経路はほぼ特定されており、血液、精液、膣分泌液、母乳を介して感染することがわかっています。
しかしながら、エイズ感染者、HIV感染者の唾液で感染することはありません。エイズに感染している人の唾液には実はウイルスは含まれています。
それでも感染しない原因としてはいくつかあげられています。
一つ目は、ウイルスが唾液には含まれているものの、その量が非常に微量であり、人に感染するほどではありません。
もしも口内が血だらけであったりするなど、大量の血液を含んでいる状態であれば別ですが、普通の状態であればバケツ数十杯分の唾液を接種しなければならないほど唾液中に含まれるエイズウイルスは少ないのです。
もう一つは、HIVやエイズウイルスの感染力の弱さが関係しています。HIVウイルスは空気や水にも弱く触れるだけで不活性となって感染力がなくなってしまいます。
そのために、口の中のように空気や水分を非常に多く触れるような場所ではその感染力が弱くなくなってしまうのです。
唾液だけでなく、汗、涙、尿、便さらにはエイズ患者とお風呂に入ったり握手をしたり、飲み物を回しのみしても感染の可能性はありません。それだけエイズは感染力が弱いのです。
そしてもう一つ唾液から感染しない理由として口の中の洗浄力があげられています。唾液には抗ウイルス作用があり、それによってエイズウイルスは死滅してしまいます。
そのために唾液によって人に感染することはほぼ可能性はないと言われています。
エイズへとなるHIVウイルスが体内に入り込んで感染する経路は主に粘膜となっているので、正常な人の唾液からはほとんど感染することはありません。
しかし、エイズに感染している人が知らないうちに口内を感染していて、そのエイズ患者とオーラルセックスなどをしてしまうとその感染率は高くなってしまいます。
あくまでも唾液では感染する確率はほとんどありませんが、血液、精液、膣分泌液、母乳などからは感染しやすいことを覚えておかねばなりません。
エイズ、HIV感染して1週間経つと
エイズとHIVという言葉を知っている人はほとんどの人がそうだと思いますが、エイズとHIVの違いを知っている人はあまりいないかもしれません。
エイズに初期症状があると思っている人も多くいると思いますが、正確にはエイズには初期症状はなく、HIVに感染して日本では厚生労働省が定めた23の病気のうちの一つでも発病したら、エイズとなります。
つまり一般的に使われる初期症状はHIVに感染した段階での初期症状のこととなります。
HIVの初期症状としては、発熱や発疹、またリンパの腫れ、咳、体重減少などがあります。
これらはHIVウイルスが体内に入ることで急激に免疫力が増加し、HIVウイルスが増えてリンパを襲っていることを表しています。
しかし、この症状は第一に風邪やインフルエンザに症状が非常に似ており、HIVと判別するのが非常に難しいこと、そして約2週間ほどでこれらの症状が治まってしまい、体内でHIVウイルスを保持している状態が続くにもかかわらず通常の状態に戻ってしまうことで発見が非常に難しくしなっています。
この急性発症期が終わると約5~10年間は特になにも起こらず、ただ体内でHIVウイルスが増殖し続けます。
現在では10年も経つことがなく数年で発症をしてしまうこともあるそうですが、エイズ症となる病気を発症し出します。
このエイズになる直前の1週間ほどでも実は症状がでてきます。これは初期の症状と同じで発熱、体重減少、発疹、体のだるさなどがでてきます。
しかしながら、これらが急性期の症状以上に重く出てきてしまいます。これは、すでに体内でHIVウイルスがかなり増殖しており、体内の免疫力が非常に弱くなっていることを示します。
このエイズ発症期の直前では治療の幅がかなりなくなってきている状態です。HIV自体を体内から完全に除去し、エイズを治す方法は現在ではまだありませんが、早く発見することによってエイズの発症を防ぐことはできます。
そのためにも、こうした初期症状が出たときには、まずは病院や保健所などで検査を受けるのが良いと言われています。
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