HIVに感染して2週間~8週間の間に急性感染期を迎えます。これは、体内に入り込んだHIVウイルスがリンパに向かって移動をし、そこで増殖をして体内の免疫細胞を破壊している影響で起こる症状です。
症状として一般的なものは、発熱、嘔吐、喉の痛み、腹痛、筋肉や関節の痛み、リンパ節の腫れ、皮膚の発疹、だるさ、体重減少などがあります。
もっとも多い初期症状で発熱となり、初期症状が現れた人の中の50~90%の人にでる症状です。まだ、喉の痛みやリンパの腫れが70%程度となっております。
この症状だけを見ると、風邪やインフルエンザなどと変わることはなく、病院で診断を受けても風邪という結果になってしまいます。
結果的にHIVに感染している患者が初期症状を訴えて病院に行った結果、咽頭炎、扁桃炎、気管支炎という診断をされることが良くあるそうです。
こうした初期症状が治まると体内ではこの時点のHIVウイルスに対する抗体ができはじめます。しかし、これはHIVウイルスをなくすわけではなく、HIVウイルス自体は増え続けています。
この期間を無症候期と呼びます。ここでは数年から10年ほどの期間となり、体内ではHIVウイルスが増殖を続けていますが、特に健康には問題がありません。
その後、エイズ期となりエイズとなっていきますが、エイズとなる前にも実は症状があります。
エイズとなる前にはすでに体の免疫組織は壊滅状態で正常に働かない状態に近くなっています。
そのために、HIVに感染してすぐの急性感染期と同様に、発熱、体重減少、だるさ、皮膚の発疹などの症状が現れ始めます。
しかし、このエイズ期の直前とHIV感染の直後の初期症状との違いは、その症状の重さにあります。
一般的に生活していても問題のない空気中などにあるウイルスが体内に入りやすくなり、さらに体内に存在していたウイルスを免疫が抑えきれなくなります。
そのために、症状が非常に重く、特に体重減少、皮膚の発疹などは顕著に見られ、ヘルペスなどの日和見感染症を起こしやすくなってきます。
どれだけ早く感染を発見できるかがエイズを抑える鍵となるので、このような症状が見られた場合には非常に注意をする必要があります。
エイズを発症するまで
HIVに感染すると3つの期間を経て、エイズが発症すると言われています。
この期間は人それぞれでこれまでは5年から10年間体内でHIVウイルスが潜伏した後に、エイズとなると言われてきましたが、最近では2、3年でエイズを発症することもあり、突然変異しやすいHIVウイルスの特徴であるとも言われています。
HIVに感染するとまず急性感染期に入ります。感染から2週間から8週間の間で起こる症状で、インフルエンザや風邪に似ている、発熱、リンパの痛み、皮膚の発疹、体重減少、喉の痛みなどがあり、病院で見てもらっても風邪との違いは全くわからないほどで、しかも、これらの症状がない人もいます。
男性の場合は排尿時の痛みや分泌物がでてくるなどしかなく、自覚症状すらない場合もあります。
その後、無症候期にはいります。これは体内でHIVウイルスが増殖する一方で抗体も同時に増殖しているために、症状としてはほとんどなにも起こりません。
起こったとしても帯状疱疹を繰り返すなどです。見た目が健康そのもののために、ここでHIVの感染を広げている場合があります。
この無症候期の次が発病期となり本格的にエイズとなっていきます。最初は急性感染期と同じように、発熱、体重減少、疲労、皮膚の発疹などがあります。
また、全身に脂漏性皮膚炎がみられることなどもあります。これらの症状が出てくるときはかなり重症となっているので、病院などでHIVと判断されることが胃多くなります。
この頃にはすでに免疫がかなり弱くなっているので、国内で厚生労働省が定めた23の病気に罹りエイズを発症したと判断されます。
23の病気は普段の生活では罹ることのないような日和見感染症であります。しかしながらその症状は非常に危険で、生命の危機が出てきてしまいます。
肺炎や、脳症をはじめ、精神障害、認知症、記憶喪失などを引き起こすこともあります。
特に男性の場合は同性間での性交渉でHIVに感染する割合が非常に多く、その患者数も年々増えています。
HIVに感染する、エイズを発症することは確率的に非常に低いことではありますが、治療が遅れてしまうと生命の危険となる病気なだけに、しっかりと予防をしなければなりません。
エイズと白血球の関係
人間の血液中に存在する赤血球、血小板、白血球がありますが、白血球の中にはマクロファージ、顆粒球、リンパ球があります。
主に人間の免疫力の役割を担っているのがこのリンパ球で、リンパ球の中にもNK細胞やB細胞、T細胞があります。
これらの細胞が人間の免疫を支えていますが、HIVウイルスはこのリンパ球の中のCD4リンパ球を破壊していきます。
このCD4リンパ球が破壊されることでどんどん免疫力が低下していき、発熱、食欲不振、嘔吐などの症状が出て、日和見感染症などを発症させてしまうのです。
血液検査などで白血球や血小板の異常な減少が認められた場合にはエイズの可能性も視野に入れなければなりません。
白血球にかんしては成人男性、成人女性共に3500~9200が基準値と言われています。
しかし、この基準値が明らかに低い場合にはウイルス感染や悪性貧血、膠原病などの他にエイズが疑われます。これは白血球減少により体内でウイルスが増加したことによって起こる現象です。
白血球がどんどん減少をするとエイズとなってしまいます。日本では厚生労働省が指定している23の疾患にかかるとエイズが発症したことになりますが。
普段健康な状態では感染することはないウイルスに感染してしまったり、なることのない病気に罹ってしまうのです。
エイズに感染してしまうとすぐに死ぬわけではありませんが、やはり命の危険性がでてくるので、早期の治療が非常に重要となります。
エイズで白血病を治す
エイズが発症すると現代の医学でも完治は不可能で、なんとかその病気の進行を防ぐことしかできないほどの難病です。
さらに病気を悪化させてしまうと、死に至ることもあり、日本だけではなく世界中で問題となっています。
そんな怖い病気であるエイズですが、実はエイズを発症させるHIVウイルスが、難病を克服するきっかけとなっているのです。それは白血病です。
白血病とは血液のがんで、血液中に含まれる、赤血球、血小板、白血球などが骨髄で産生される途中にがんになってしまう病気です。
がんに侵された血液が骨髄内で増殖をしてしまうために、正常な血液細胞がなくなり、貧血、出血、脾臓の増大、免疫の低下などを引き起こしてしまいます。
日本では10万人に男性では10.6人、女性は7.4人の割合で白血病患者がいる割合となっています。
このような血液のがんであり、エイズと同じく免疫を低下させる病気の白血病ではありますが、実際にHIVウイルスを利用して、血液中のがんを治療している患者もいます。
アメリカのペンシルベニア大学ではこの研究が行われており、成人患者9人に投与をしたところ、3人の白血病が完全に沈静化し、4人は完全ではないが沈静化をし、2人には効果がなかったことが明らかとなりました。
患者のT細胞を取り出し、そこにがんと戦う遺伝子を埋め込みます。その遺伝子がHIVウイルスなのです。人間の免疫組織などを破壊してしまうHIVウイルスを無効化し、T細胞に入れます。
そして、そのT細胞を患者の血管に戻します。戻ったT細胞にあるHIVウイルスが癌の表面にあるCD19というタンパク質と結びつき、T細胞内に特別な受容体を取り込んでくれることによって、全身に再生されたT細胞が広がり、がん細胞を殺してくれます。
まだまだこの治療方法は確実ではなく、さらに激しい副作用などを伴います。しかし、これまで白血病の治療は薬物療法と移植療法が用いられてきました。
抗癌剤を利用したりインターフェロン治療であったり、そして骨髄移植によってその治療を行ってきました。
しかし、このHIVウイルスを使用することで新たな白血病の治療ができるようになってきています。
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